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 セッティング -スピーカーの位置決め-  予備知識|スピーカーの位置決め|
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スピーカーの位置決め
スピーカーから放射された音の拡がり
壁からの距離
スピーカーの間隔と振り角
スピーカーの高さ
 
 
「スピーカーをどこに設置するか」ということにあまり拘らないオーディオファンもいらっしゃいますが、私は、この位置決めが良い音のシステム作りにとって、最も重要な作業であると考えています。
再生される音は、スピーカーがどの壁面を背にするかで大きく違ってきますし、同じ壁面の前でも、壁からどれくらい離すかで違ってきます。
そして、この設置位置による音の違いが、音の最終仕上がりに大きく関わってくるのです。
設置する位置が良ければ、ケーブルの接続や振動対策などの効果はてきめんに現れて、音はグングン良くなっていきますが、悪い位置だと、何をやっても変わり栄のしない音で終始してしまいます。

つまり、良い音に仕上がるかどうかは、このスピーカーの位置決めでほぼ決まってくるのです。ところが、ひとつの壁面の中で音の良い位置はそう何箇所もあるものではありません。
そのため、より良い音を得るには、スピーカーの設置が許容されるスペースの中から、ベストの位置を探し出す必要があります。
それだけに、このスピーカーの位置決めは慎重の上にも慎重に行なわねばなりません。

なお、スピーカーの位置決めは、セッティングの初期の段階で行なうので、その時点では「音を悪くする要因」は数多く存在しています。
そのため、
・サシスセソが強調される
・センターで歌っているボーカルが真ん中に定位しない
・楽器の音像が大き過ぎる
等々といった、細かな問題点が見つかるかもしれませんが、それに目(耳?)を奪われることなく、これからご紹介する手順に則って、「よりがっしりとした音の骨格」を作ることに心掛けてください。

なお、一旦スピーカーの位置を決めた後、ケーブルの接続や振動の対策を行なっても、改善の効果があまり出てこないときは、もう一度、振り出しに戻って、スピーカーの位置をもう一度見直す必要があるかもしれないことを、心の隅に留めておいてください。
 
■スピーカーから放射された音の拡がり
スピーカーの位置決めに当って、知っておきたいのが、スピーカーから放射された音がどのように拡がり、そして、耳に入ってくるかということです。このことを知っていれば、スピーカーをどう動かせば、より良い音が得られるか、自ずと見当がつくようになります。

・指向性
右の図は指向特性と呼ばれるもので、スピーカーから放射された音が空中を拡がっていく様子を示したものです。

この図から、低い周波数の音(図では300Hz)は横にも後方にも拡がりますが、2,000Hz、5,000Hzと、音が高くなるにつれて直進性を増すことが判ります。

つまり、同じスピーカーから放射された音でも、周波数が低い音ほど、横や後方に拡がっていくため、スピーカー周辺の壁や床に影響を受けやすいということができます。

これがスピーカーの位置決めの際に、まず念頭に入れておいていただきたい現象です。

スピーカーの指向特性

・反射音
次に、壁や床で反射される音について、もう少し突っ込んで調べてみましょう。

@音が壁などに当たったとき、コンクリートや漆喰壁のように、壁を形成している材質の比重が大きいものほど、また、壁の厚さが厚くなるほど、低音から高音までよく反射をします。
それに対して、障子やふすまなどのように、軽くて薄い材質の壁は、ほとんどの音が透過し、あまり反射しません。

そのため、スピーカーから放射された音は低い周波数ほど、横方向や後ろ方向に拡がっていくのいくので、より低音を出そうとするなら、スピーカー周辺の壁が、より比重が大きくて、厚い壁の方が有利です。
また、スピーカーを壁に近付けたり、遠ざけたりした際、比重の大きい壁の方が、音の変化、とりわけ、低音域の変化は大きくなります。

A一方、音が空中を伝搬していくとき、そのエネルギーは徐々に減衰します。
減衰の仕方は、反射のない無限に広がる空間では、距離が2倍になるごとに6dB(音圧で1/2)ずつ減衰します。
しかし、オーディオ装置が設置される部屋は、壁や床などに囲まれていて、そこで音が反射されるので、減衰量は少なくなります。
実際に、どれくらい減衰するかは、壁や床の反射率で変わってきて、反射率の高い壁ほど減衰する量は少なくなります。

この2つの現象から、さまざまなことが判ってきます。例えば、
@ブックシェルフ型スピーカーを床に直置きすると音がこもるのは、ウーファーが床に接近しすぎるために、低音が強く反射され、低音過多になるからです。

Aスピーカーの設置可能な壁面が複数面あれば、比重が大きく、かつ厚い壁の前にスピーカーを設置する方が、豊かな量感の低音が得易くなります。それは、室内の壁面の中でスピーカー後方の壁までの距離が一番近いため、その壁による低音の反射をより多く利用できるからです。

Bさらに、低音の量感を増すにはスピーカーを後方の壁に近付け、スピーカーを壁から離すと量感は減ります。これも、スピーカー後方の壁までの距離が一番近く、その影響を強く受けるからです

このように、低音を増やすには壁に近付ける、減らすには壁から離す、というのが基本なのですが、それだけでは解決できない問題があります。それは、次に述べる直接音と反射音の時間差による干渉です。

・直接音と反射音の時間差
私たちの耳には、スピーカーから放射された音が直接届く直接音と、壁などに反射して届く反射音が入ってきます。

反射音には、1度反射して届く一次反射音、2度反射して届く二次反射音、三次反射音・・・などがありますが、反射音のレベルは一次反射音が一番高く、反射を繰り返すにつれてレベルは低下していきます。
そのため、スピーカーの位置を決める際、最も大きな影響を与えるのが、一次反射音です。
右の図にスピーカー後方と左右の壁、および床と天井での一次反射を示しました。

ところで、この一次反射は直接音よりも遅れて耳に入ってきて、思わぬ干渉を引き起こします。

音とは空気の粗密波、言い換えれば、気圧の高いところと低いところが繰り返し起こる波です。
もしも、反射音が1/2波長遅れる場合、直接音と反射音は逆相の関係にあるので、互いに弱め合い、逆に、1波長分送れるときは、同相の関係にあるので強め合います。(前ページの「周波数と波長の関係」を参照してください)

仮に、直接音の経路と一次反射音の経路の長さに1、7mの差があるとすれば、100Hzの音は逆相になるので音圧は下がり、同相となる200Hzは強調されます。また、それ以外の周波数の音は、100Hzに近い音ほど音圧は下がり、200Hzに近い音ほど、上がります


壁の一次反射

床と天井の一次反射
つまり、ひとつの壁面だけを考えると、必ず、音が弱められる周波数と強められる周波数が出てくるのですが、部屋には、前後左右の壁面と天井、床の6面の反射面があります。
多くの壁間面で、同じ周波数で同じ干渉が起こる位置にスピーカーを設置すると、低域の周波数特性に大きな暴れが生じて、音が悪くなります。

音の良いスピーカー位置を探すということは、反射音によって特定の周波数の音が減衰したり、強調したりしない位置を探す、つまり、、周波数特性に凸凹がなく、周波数が下がるにつれてきれいな減衰特性を示す低音が得られる位置を探し出すことにほかなりません。

この位置決めは試聴によって行なうわけで、それによって聴感上フラットな特性が得られれば、それは一次反射だけでなく、二次、三次・・・反射なを加味した調整が行なわれたことになります。
 
■壁からの距離
それでは、実際にここぞと思う場所にスピーカーを置いて、位置決めを始めましょう。
このスピーカーの位置決めは、低域での周波数特性に凸凹がなく、きれいな減衰特性を示す位置を探し出すことが目的ですが、音の良い位置になれば、低域に弾力のある力強さが加わってくると同時に、解像度も高まってきます。
そこで、低音域の力感だけでなく、全帯域の解像度も監視しながら位置を決めていってください。

最初に行なうのが、スピーカーを前後に移動して、後方の壁からの反射音の影響が少ない場所を探す作業です。理由は、スピーカー後方の壁の反射が音に一番影響を与えるからです。
初めのうちは、設置可能なスペースの中で大きく動かし、良さそうな場所が見つかれば、徐々に細かく動かして追い込んでいきます。
左右のスピーカーは、最終的には後方の壁からまったく等距離になる位置に設置しなければなりませんが、この段階では目分量でかまいません。

・低音が強過ぎる、明瞭度が悪いときは前方に移動
・逆に、低音に量感がなく、音が痩せている場合は壁に近付けて
追い込んでください。

後方の壁からの距離が粗方定まってきたら、次に、後方の壁からの距離を一定に保ちながら左右の壁からの距離を調整します。
このときも、最初は大きく動かし、徐々に動かします。

こうして、後方と左右の壁からの距離が決まったら、次に、左右のスピーカーの間隔と振り角の調整を加えていきます。

Bなお、左右の壁からの距離を追い込んだら、さらに、その近辺を細かく移動して、もっと低音がより低い周波数まできれいに伸び、低音楽器の音色に混濁がなくなるベストの位置がな再度チェックすることをお勧めします。

あとのページで紹介する「部屋のチューニング」や「振動のコントロール」でも、低音の出方をある程度変えることができます。しかし、それらは、このスピーカーの位置決めによって得られた低音に、さらに磨きをかけるものなので、ここでは、設置可能なすべての場所を探って、その中でベストの位置を入念に選ぶようにしてください。
また、一般家庭では、スピーカーをあまり大きく動かせないことが多いですが、可能な範囲で良いポイントを見つけるようにしてください。

壁からの距離を決める際の要領
・試聴に使用する曲は、低音がたっぷり入っていて、かつ、明瞭度が高いこと。そして、ボーカルが入っているのが便利です。
理由は、中音域の明瞭度を確認しながら、低域の調整ができるので、誤った判断をする確率を下げられるからです。

・低音が変化すると、中音や高音も変わります。スピーカーの位置決めの段階では、中音や高音の出方にあまり神経を尖らせず、監視する程度に止め、なるべく低音に集中してください。おそらく、質の高い低音が得られる位置では、中音や高音も良い出方になっているはずです。
ボーカルの入った曲を使用するのはこのためです。

・スピーカー後方の壁からスピーカーまでの距離は、最終的にはミリ単位で合さねばなりません(左右の壁が異なるときは、若干ずらした方が良い時があります)が、部屋のチューニングなどをすると、音像がズレてくるときがあるので、この段階ではほぼ同じ距離で留めておき、次の「スピーカーの間隔と振り角」に進み、そして、ひと通りのセッティングが終わってから、きっちり調整するくらいの気持ちでやってください。
 
■スピーカーの間隔と振り角
スピーカーの位置が粗方決まったら、2本のスピーカーの間隔と振り角を調整して、さらに音場の拡がりと音像の定位を確かなものへと追い込みます。

・スピーカーの間隔
前ページの「予備知識」で、スピーカーと試聴位置の関係は正三角形が良いと説明しましたが、実際に、ものさしで正確に測る必要はなく、大まかなところで結構です。
この作業で大事なのは、音場空間の拡がりと、その空間に実在感あふれる音像を定位させることです。そのため、あまり正三角形にはこだわらず、実際に試聴しながら追い込んでください。

まず、2本のスピーカーの間隔を決めるポイントは、
センターに定位する楽器やボーカルが、そこに実在しているかのような大きさと音の厚みが得られるようにすることです。試聴にはボーカル曲を使うと判定がしやすいです。

間隔が広過ぎると、センターに定位するボーカルの力強さが弱まり、実在感の乏しい、薄っぺらな音になります。
逆に狭過ぎると、音場空間が狭まって、楽器と楽器の間隔が窮屈になると同時に、センターに定位するボーカルが出しゃばるようになります。
この調整も初めのうちは大きく動かし、徐々に動かす距離を細かくし、最後はp単位で調整して最適位置にもっていきます。

・スピーカーの振り角
スピーカーの間隔の調整だけで、楽器の音像がその楽器らしい大きさに追い込めないとか、楽器が前後左右に並んでいる様が十分に再現できないといったときは、スピーカーを内側に振る角度を調整してください。

一般的に、スピーカーは後方の壁と平行に置かれるケース(図−a)が多いですが、この角度で音像の大きさや楽器の前後左右の位置関係がうまく再現できて、ステージの風景が連想できるならば、そのままの状態で使用を続けてかまいません。
しかし、もっとステージの風景が見えて来るようにしたい、楽器の大きさをより実物大にしたいときはスピーカーを内側に振ってみてください。

その際の代表的な角度は、(b)のスピーカーの中心軸をリスナーの耳に向ける方法と、(c)の2本のスピーカーの中心軸を顔の手前で交差する方法があります。
しかし、あまりこれらに捉われることなく、少しずつ角度を内側に振りながら音を聴き、ステージに現れる楽器の音像のフォーカスが合い、楽器の前後左右の関係がよく分かる角度を選ぶようにしてください。
 
(a) (b) (c)

※センターに定位する楽器の音像のフォーカスを合わせるには、左右2本のスピーカーの背面までの距離と振り角をピッタリ合わる必要があります。
ただし、「壁からの距離」の項でも注釈したように、あとのセッティングでベストの位置がズレることが考えられるので、調整はある程度の線に留め、ひと通りセッティングの工程が終わってから、最終的に詰めると良いでしょう。
 
■スピーカーの高さ
この項目は「スピーカーの位置決め」の範疇には入らないのですが、スピーカー設置の重要項目なので、このページで紹介することにします。
ほとんどのスピーカーは、2ウェイ以上のマルチウェイスピーカーシステムです。
そのため、2ウェイの場合はウーファーとツィーター、3ウェイの場合はウーファーとスコーカー、およびスコーカーとツィーターが再生する音域にオーバーラップする部分があります。
つまり、オーバーラップする音域では2つの音源(スピーカー)から同じ音が出ているわけです。

このとき、2つの音源(スピーカー)から試聴位置までの距離に差があると、リスナーに届く時間にズレが生じます。

通常、2ウェイスピーカーシステムのクロスオーバー周波数は2〜3kHzに設定されていることが多いですが、仮に、それが3kHzだとすると、3kHzの音波の波長は約11.3cmですから、ウーファーから試聴位置までの距離がツィーターよりも6cm弱遠くなると、このウーファーから再生された3kHzの音は、ツィーターの音に対して1/2波長遅れ、つまり、逆相になりなるので、3kHz近辺の音は弱められてしまいます。
(ツィーターが遠い場合も同じ現象が起こります)

ウーファーとツィーターの距離の差が半波長も違わなくても、その差が大きいほど、中音域が弱められるという現象は強く現れます。そのため、ウーファーとツィーターの距離の差はなるべく等しくなるようにしたいものです。

この差が少なくなる高さは、スピーカーを右の図のように水平に設置した場合、ウーファーとツィーターの間がほぼ耳の高さになるように設置することです。
なお、3ウェイの場合は波長の短い音域がオーバーラップするスコーカーとツィーターの間が耳の高さにくるように設置してください。



しかし、棚やラック、あるいはスピーカースタンドの高さの関係で耳の高さにスピーカーを設置できないときもあるかと思います。そのようなときは、スピーカーを傾けて、各ユニットと試聴位置までの距離がなるべく等しくなるようにしてください。なお、スピーカーを傾けるときは転倒防止には十分配慮してください。

※ スピーカーの指向特性からも判るように、音は高音になるほど直進性を増します。そのため、耳の位置がツィーターの中心軸から大きく離れると高音不足の原因にもなります。
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