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振動で音が変わるなんて想像すらできない人が多いのではないでしょうか。
「だいいち、我が家は静かな住宅街にあるので、機器が振動するなんてことはめったにないから、心配はないんだ」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、このページで取り上げる振動とは、われわれが日常生活をしていて身体で感じるほどの強い振動ではなく、機器自体が発する振動なのです。
スピーカーは音を発生させるために振動板を振動させますし、その振動で放射された音も空気の振動です。また、CDプレーヤーなどに使用されているモーターは回転してディスクを回しますから、これらの回転も振動を伴います。
さらにミクロ的に見れば、アンプやCDプレーヤーなどの電源回路に使用されているトランスなどもごくわずかではありますが振動しています。
これらの振動が筐体や台などを通じ、あるいは空気を介してトランジスターなどの電気部品に伝わりますと、部品は振動して、電気を発生させます。
これらの振動によって発生する電気はごくわずかなものですが、音楽信号に含まれる微小な倍音成分から見れば侮れないレベルのものがあります。
そのため、振動によって発生する電気(=音楽信号からみればノイズになります)が、微小な倍音成分をマスキングし、聴こえなくしてしまうために、情報量の欠落した、本来の音色とは違ったものにしてしまいます。
そこで、これらの振動に対してどう対処するかということになります。
モーターやディスクの回転で起こる振動、あるいはトランスの振動などが及ぼす個々の機器内での影響については、メーカーが設計の段階から部品の選定や配置、さらに音まとめの作業を通して振動対策を講じているので、ユーザーが中を開けて独自の振動対策をするのは至難であり、悪くすると機器を壊してしまう恐れがあるのでやめた方がいいでしょう。
われわれが行なうのは、機器間の振動伝搬をいかに抑え込むかという作業です。
こんな地味な作業で音が良くなるのか疑問視する向きもあるかもしれませんが、びっくりするほど音が変わることがあります。
現役時代、国内外の各地で試聴会を実施した際、何度この作業に助けられたことがあるか数え切れません。
オーディオの面白さにどんどんのめり込んだきっかけを与えてくれたのが、この「振動のコントロール」なのです。
さて、振動源はさまざまありますが、モーターなどの振動が他の機器に与える影響はそれほど大きなものではないので、この点については頭の隅にでも止めておいていただき、必要に応じて随時対処するようにしてください。
振動のコントロールで最も気を配らねばならないのが、スピーカーの振動対策です。
この振動は音楽信号に類似した波形であるため、音楽信号とは無関係の諸振動よりもマスキング効果はとても大きく、音質を損ねる大きな要因となるのです。
そこで、このページではスピーカーの振動による影響を軽減する方法を中心に説明します。 |
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■機器を乗せる台について |
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通常アンプやCDプレーヤーなどは、ラックやサイドボード、あるいは棚に乗せて使用されます。
ところが、これらアンプ類を乗せる台や棚板が薄っぺらかったり、中が空洞の張り子になっていたりするものだと、情報量の欠落した表情の乏しい音になってしまいます。
理由は、それらは叩くと、響きが長く残ったり、固有の響きがしたり、あるいはビビり音がしたりします。
そのため、このような台や棚板に振動が伝わると、頑丈な台や棚板よりも大きく振動するだけではなく、汚い固有の振動が加わります。
その結果、このような振動がその上に乗っている機器を揺することで、機器に使用されている部品が振動してノイズを発生させ、そのノイズが音楽信号にとって大切な微小な倍音をマスキングしてしまうからです。
そこで、ラックや棚を新調するときは、なるべく頑丈で、叩けば「コツコツ」と音のする、余分な響きが少なく、振動の減衰が速いものをものを選ぶようにしてください。
また、減衰の速さが同程度のものなら、響きのきれいなものを選ぶとよいでしょう。
このことはアンプなどを乗せるラックだけではなく、スピーカーの台(スピーカースタンド)についても同じです。
スピーカースタンドは、単なるスピーカーを乗せる台ではなく、スピーカーの一部と言っても過言ではありません。
そのため、スピーカースタンドによっては、スピーカーの良さを台無しにしてしまうものもありますから、スピーカーが倒れない程度に乗り、高さも丁度いいサイズといった点だけで安易に選定するのは非常に危険です。
スピーカー・メーカーが専用スタンドを用意している場合は、それを使用するのが無難です。
一方、どうしても汎用スタンド品を使用しなければならないときは、実際にスピーカーを乗せて試聴したり、音に詳しい知人や店員からアドバイスを受けるなど、慎重に吟味されることをお勧めします。
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もしも、振動しやすい薄い板や張り子の板など、音質的に好ましくない台に乗せざるを得ないときは、オーディオボードを使って機器の足固めをして、機器の台をしっかり支えるようにすれば、音は格段に良くなります。
オーディオボードは音質的に吟味されたものがオーディオ店で販売されていますから、それらの中からより音質的にすぐれたものを購入するのが手っ取り早い方法ですが、中には能書きだけ立派なものもありますからご注意ください。
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一方、コストを下げたい、あるいは自作をしたいと思われる方は、ホームセンターやネットショップで音の良さそうなものを見繕うのもいいでしょう。
素材として木材や大理石などがよく利用されますが、木材の場合はなるべく重くて響きの少ないものを選ぶと同時に、薄いと響きが強くなるので厚さにも留意してください。
大理石などを使用するときも同じことが言えますので、少なくとも1cm以上の厚さのものをご用意ください。
また、台がヤワでグラグラしているもの、あるいは、床との間に隙間があってガタつくものも機器をしっかり支えられないので音質的には良くありません。
ガタつきがある場合はスペーサーを挟んでガタつきをとってください。わずかな隙間のガタ取りには硬めの紙が便利です。折り畳む回数を変えることで厚みを調節して使ってください。
ラックなどのビスの締め付けが緩いときは増し締めをしてください。
アンプやCDプレーヤーなどの設置で最も避けたいのが、これらを積み重ねることです。
機器の天板はどんなに厚いものても、頑丈な台に比べれば振動しやすい上に、モーターなどの回転による振動がアンプに伝わりやすくなります。
また、機器の上に鉛の板などを乗せるて筐体の振動モードを変えることで、好みの音になるようにチューニングしている人もいますが、メーカーが個々の機器を音質チューニングするときは、何も乗せない状態で行なっていますので、まずは上にモノを乗せない状態からスタートしてみてください。
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■スピーカーとアンプの位置関係 |
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アンプ類にスピーカーの振動をなるべく伝えにくくするため、スピーカーとアンプ塁の位置関係についても配慮が必要です。
注意点として以下のものがあります。
@スピーカーとアンプを同じ台に乗せると振動は伝わりやすいので、できれば別々の台に乗せたいものです。
サイドボードの中にアンプ類を収納し、上部にスピーカーを設置しているのをときどき見かけますが、スピーカーはスピーカースタンドに乗せるなど、台の分離を図ってください。
どうしても台の分離ができないときは、後述の「振動のコントロールのコツ」で紹介している振動の伝達を少しでも遮断するような工夫をすれば、少しは振動の影響を減らすことができます。
Aスピーカーの振動が伝わりにくくなるよう、なるべくアンプ類とスピーカーを離して設置してください。
量販店のミニコンポの展示のように、アンプ類を2本のスピーカーの間に置いている人を見受けますが、こういった設置は両方のスピーカーの音圧をまともに受けて、大きく振動します。
(それは低音を再生しているときに、アンプの天板を手で触れれば振動しているのがはっきりとわかります)
また、スピーカーから放射された音の波面が乱れて、音像が乱れる原因にもなるので、アンプ類は両スピーカーの外側に設置することをお勧めします。
アンプをスピーカーから離して設置すると、スピーカーケーブルが長くなって音質を損なうという理由で嫌う人もいますが、スピーカーケーブルは多少長くなってもそれほど音質に大きな影響は与えません。
それよりも振動の影響による音質劣化の方がはるかに大きいので、離して振動の影響を減らす方がずっと得策です。
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■スピーカー設置の基本 |
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オーディオ機器の中で、設置の仕方で音がゴロゴロ変わるのがスピーカーです。
そのことについてもう少し突っ込んで考えてみたいと思います。
スピーカーは振動板が空気を振動させることで空気の粗密波を作って音を出しますが、われわれに聴こえる音は、振動板が作り出す音だけではなく、それにキャビネットの響きが加わったものです。
そのため、キャビネットの響き方によって音が大きく変わってきます。
みなさんもご存知のように、楽器の音色を決める要素として、筐体の響きがたいへん重視されますが、スピーカーも楽器と同様、いい音で鳴らすには、キャビネットをいかにきれいに響かせるかが重要なのです。
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スピーカーは大別して、フロア型(床に直接設置する据置型)とブックシェルフ型(元々は本棚に置ける小型スピーカーを指す言葉でしたが、ここでは据置き構造でない=脚がなく底板が一枚板で構成されていれば、それがたとえ一人で運べないほど大型であっても、このカテゴリーに含めます)があります。
キャビネットの構造がフロア型であれ、ブックシェルフ型であれ、キャビネットの底板が床、あるいは台にベタッとくっつくと、きれいな響きが得られないので、メーカーでは必ずスピーカーと台の間にモノを挟んでスピーカを持ち上げて音質のチューニングを行ないますが、そのモノも接触面が比較的狭くなる小さなものを吟味して使用しています。
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フロア型スピーカー |
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このようにチューニングされたスピーカーをユーザーが演奏する際、なるべくメーカーの意図した音が得られるよう、製品にはスピーカーと台の間に挟むモノが付属されています。
フロア型に付属されているので一番多いのが金属製のスパイクですが、少し厚めで硬めのゴム系のインシュレーター(緩衝材)なども見受けられます。
また、中には最初から付属品として同梱するのではなく、最初からキャビネットに組み込まれた製品もあります。
これらフロア型の場合は、付属されている純正品を装着するのがいいでしょう。
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一方、ブックシェルフ型の付属品には、コルクやゴム、フェルトなどの比較的薄手のモノ(=インシュレーター)が使用されることが多いです。
これらの付属品は比較的安価なものが多いですが、それはコスト面の制約があがあって高価なものが付属できないからです。
もちろんメーカーはその付属品が最適であるとは決して考えていません。それでもそういったモノを付属するのは、せめてベタ置きを避けて、少しでもいい音で聴いてほしいとの意が込められているのです。
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ブックシェルフ型スピーカー |
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そのため、ブックシェルフ型の場合は、せめて付属品を使ってスピーカーを台から離すようにしてほしいものです。
しかし、それで飽き足りないときは、10円硬貨やベイゴマに替えたり、ネルやフェルトといった布の種類や厚さを変更して、音の変化を試してみるのも面白いです。
さらに、その上を目指す人は、市場には数多くのインシュレーターが出回っていますので、それを利用するのが近道です。
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ところで、インシュレーターは挟めばいいというものではありません。
インシュレーターは使用する素材や製品によって音が違ってきますが、同じインシュレーターを使用しても、使い方や挿入する位置などでも違ってきます。
インシュレーターの一般的な使用法に、4個のインシュレーターでキャビネットの四隅を支える4点支持と、前面2点と後面1点、あるいはその逆に前面1点と後面2点を支える3点支持があります。
3点支持は3点で1つの平面を形成するために、台が平らでなかったりインシュレーターの高さが不揃いであったりしてもガタつきがなく設置できるので採用する人が多いです。
しかし、3点支持だと、インシュレーターの支えのない2箇所のコーナーはフリーとなるため、そこが振動しやすいのと同時に、キャビネットを伝搬してきた振動のエネルギーがそのコーナーで反射され戻っていくことでキャビネット全体の振動モードが乱れ、音のエネルギー感も薄れます。
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それに対して4点支持は、4つのコーナーをしっかり支えられるので、コーナーの自由振動がなくなり、キャビネットを進行してきた振動もコーナーでアースされるので音質的には有利です。
私はこの4点支持が音質を高めるための正当な攻め方だと考えています。
ただ、台が平らでなかったり、インシュレーターの高さの不揃いだったりして、スピーカーとインシュレーターの間に隙間ができると4点支持の効果がなくなり、音質の向上につながりません。
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 インシュレーターの位置 |
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隙間ができた場合は、スペーサーを挟んでガタつきがなくなるように調整してください。
スペーサーには布あるいは硬めの紙などが便利です。折り畳んで厚さを調整することができます。
(音が膨らむ=締まりがないときの一時的な対策として、3点支持が有効なことがあります)
またインシュレーターを使用する上で注意しなければならないのは、4点支持であれ3点支持であれ、スピーカーキャビネットの底面のどの辺りにインシュレーターを入れるかということです。
ベストポイントは底板のなるべく外側の角です。3点支持の場合、2個は4点支持と同じですが、残りの1個は辺の中央のなるべく外側に挿入します。
なぜかと言いますと、内側に入れると、そこが振動の節となるので、底板のきれいな響きがなくなり、かつフリーとなった角が前述のような悪影響を音に及ぼすからです。
ところで、バッフル板(スピーカーユニットが取り付けられている前面の板)が、キャビネットの下部まで達しているスピーカーの場合、バッフル板の下を支えると響きが悪くなるので、必ずインシュレーターは底板の隅に入れてキャビネットを支えるようにしてください。
さらにブックシェルフ型スピーカーを設置する際の注意点を続けます。
ブックシェルフ型にはキャビネットのサイズが大小さまざまなものがあります。
どのようなサイズであっても、一般的にスピーカーの高さはツィーターの下当たりが耳の高さになることが望ましいと言われています。
そのため、最適な高さになるようにスピーカーを持ち上げねばなりませんが、当然、キャビネットのサイズによって持ち上げる高さが異なってきます。
多くのブックシェルフ型スピーカーにはメーカーの純正スピーカースタンドがありますので、それを使用するのが無難です。
特に、小型ブックシェルフ型は、棚やサイドボードに乗せる手もありますが、設置場所が自由に選べる=壁からの距離を自由に調整できるスピーカースタンドを使用されることをお勧めします。
なお、スピーカースタンドを使用する際も、スピーカーの底板全面がスタンドにベタッと触れないよう、インシュレーターを挟んでください。
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■スピーカーユニットのネジの調整 |
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スピーカーを長期間使用していると、スピーカーユニットを取り付けているネジが弛んできて、反応の鈍い音になってしまいますから、ときどき締め直してください。
その際、強く締め付け過ぎると、スピーカーユニットとキャビネットの結合が強まって、ユニットの振動がキャビネットに伝わりやすくなり、腰高の詰まった音になるので、締め過ぎには注意をしてください。
締め付ける強さは機種により異なるので、ご自身で最適な締め付け具合を見つけてください。
と言っても、慣れないと見つけるのはむずかしいかと思いますので、要領をご紹介しましょう。
まず、すべてのネジを同じ強さで締め付けます。そして音を確認してください。
締め付け不足の場合は、さらに1/4回転ほど増し締めし、締め付け過ぎと判断したときは1/4回転ほど戻して音を確認します。
これを繰り返して最適な締め付けの強さに追い込んでください。
そして、最適な締め付けの強さを体で覚えるようにしてください。そうすれば、次回ネジの調整をするとき調整が素早くできます。
なお、あまり強い力で締め付けると、ネジ穴がバカになるのでご注意ください。
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■振動コントロールの対象箇所 |
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ここからが本格的な振動のコントロールの話です。
これから紹介する振動対策こそ、セッティングの面白さが本当に実感できるだけでなく、他の人にグ〜ンと差をつけられる、オーナーの腕の見せ所でもあります。
なお、オーディオ機器の設置の仕方にはいろいろありますが、ここではラックとスピーカースタンドを使用した設置を例にとって振動コントロールの方法を説明することにします。
スピーカーの振動板が振動することによって音が出るわけですが、その振動がスピーカースタンドやラックを介してアンプ類に伝わる経路をピンク色の線で示しました。
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この経路の中で、われわれユーザーができる振動対策の箇所は次の@からEです。
スピーカーユニット(振動源)
↓ @ネジの締め付け強さの調整(前述)
スピーカーキャビネット
↓ Aインシュレーターの使用(前述)
スピーカースタンド
↓ Bスタンドと床の間
床
↓ C床とラックの間
ラック
↓ Dラック本体と棚板の間
(棚板が棚板受けに乗っかっている場合)
棚板
E棚板とアンプ類の間
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 スピーカーから他の機器への振動の経路 |
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また、上記の経路とは別に、スピーカーから放射された音は青色の矢印で示したように、空中を伝搬してアンプ類やラック、スピーカースタンドを振動させます。
この空中を伝搬する経路で留意したいのは、アンプ類が直接音圧を受ける以外に、空中を伝搬してきた振動でラックなどが揺すられると、その振動が機器にも伝わるということです。
そのため、こういった空中を伝搬する振動に対しては、アンプ類はスピーカーから離れた、音圧の影響を受けにくい場所に設置するのが一番効果があります。
※ ラックをスピーカーから離れた場所に設置したから振動対策は不要だと安心しないでください。
ラックをスピーカーから離れた場所に設置しても振動の影響が完全にゼロになる訳ではありませんから、「機器を乗せる台について」の項で説明しましたように、なるべく振動のしにくい丈夫なものを選ぶなどの工夫が必要です。 |
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■振動コントロールのコツ |
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いよいよ振動対策の本論に入るわけですが、その前に振動対策を実施する上で覚えておいて欲しいポイントを紹介することにします。
振動を遮断する緩衝材として求められる物性は、振動を吸収したり、振動の伝達を遮断する効果が高いことはもちろんですが、機器をしっかりと支えることも求められます。
振動を吸収しやすいのは、ネルなどの布やフェルト、コルク、ゴムなどの柔らかい素材です。これらは厚さを変えることで、振動吸収効果を調整できます。
しかし、あまり厚くし過ぎると機器をしっかり支えられなくなって、芯のない、立ち上がりの鈍い音となり、情報量を減らす原因になるので注意してください。
一方、機器をしっかり支えるには硬い素材の金属や木材、石材が有利ですが、硬い素材は総じて柔らかい素材ほど振動吸収力はありません。
また、硬い素材同士が接触すると、振動ははね返されてしまって、つまった腰高の音になってしまう嫌があり、硬さだけでは不十分なことがあります。
さらに、振動の伝達を遮断するには、伝達面(接触面)を急激に変化させる方法があります。
先端が尖ったスパイクがその代表例ですが、先端を尖らせないで形状や素材、構造を工夫することで振動伝達を激減させることもできます。
最後に、どんな素材でも、大なり小なり、その素材固有の響きをもっていて、その響きが再生音を変化させます。そのため、振動対策には固有の響きが少ない素材を選ぶことが重要です。
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そういった振動の伝達を遮断する目的で、メーカーが研究を重ねて開発されたインシュレーターが市場に出回っています。
インシュレーターは安価なものから高額なものまで、また、柔らかい素材から硬い素材まで、さらに、柔らかい素材と硬い素材の複合品、あるいは、形状の工夫されたもの、とさまざまなものが販売されています。
手軽に音質を改善したい人は、その中から気に入ったものを求められるのがいいでしょう。
しかし、既存のものに飽き足らない人、自分のオリジナルを作ってみたいという人は、ホームセンターなどで販売されている材料の中からインシュレーターに向いたものを見つけて、自作してみてはいかがでしょか。
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 市販のインシュレーター |
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街では、制振性に優れた特殊な金属はなかな手に入れにくいと思います。
そこで金属でも、木材でも、極端な場合10円硬貨でも構いません。指で弾いて、なるべく響きの少ないものを選んでください。また、重いということも選択肢のひとつです。
ただ、これらは単材だと十分な遮断効果得られないことが往々にしてあります。
そのときは、片面、もしくは、両面にフェルトなど柔らかい素材を貼って振動吸収効果を高めるようにしてください。柔らかい素材の厚さの調整がポイントです。
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 自作インシュレーター |
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それでは前項の図の番号順に、振動対策の方法を紹介しましょう。(@はすでに説明したので割愛します)
Aの箇所
スピーカーとスピーカースタンドはどちらも広い面をもっていて、かつ木材や金属といった硬い素材でできています。そのため、まず緩衝材は四隅に挿入し、接触面を狭めるのが基本です。
緩衝材として、スピーカーまたはスタンドに付属のスペーサー、あるいはネルやフェルトのような柔らかい素材で十分なときもありますが、不十分なときは、自作もしくは市販のインシュレーターを検討してください。
なお、硬い素材だけの市販のインシュレーターを使用するときは、「メーカー品だから大丈夫」と頭から信じないで、柔らかい素材を併用して音をチェックし、機器の置かれている環境の中でベストマッチの振動対策を心掛けるようにしてください。
特に、先端の尖ったインシュレーターを使用する場合の盲点は、尖った側の処理です。
尖った側が硬い台と接しているケースでは、間に厚さ2mm程度の柔らかい素材を挟むと、音の出方がグンとスムーズになることがあるので確認してください。
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Bの箇所
この箇所は床がフローリングのような硬い材質の場合と、固い材質の上に絨毯が敷かれている場合、全体に柔らかな畳の場合とで対策が若干異なるので、個々に説明します。
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・床の表面が硬い場合
スパイク等が付いていないスピーカースタンドを使用するときは、Aのスピーカーとスピーカースタンドの間の対策と同じです。柔らかい材質のスペーサーだけでかなりの効果がありますが、不十分だと思ったら本格的なインシュレーターの使用を検討してください。
ここで、袋ナットを利用した安価なインシュレーターをご紹介しましょう。袋ナットの穴はブチルゴムか粘土を充填して泣きを抑え、丸い方を下にして使用します。そして、袋ナットの上だけ、あるいは下だけ、さらに上下にフェルト等の緩衝材を挟んで試聴し、一番効果のあるものを選んでください。
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 袋ナット |
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スパイク等が付いているスピーカースタンドを使用するときは、床に傷が付かないよう、スパイク受けを使用するケースが多いですが、スパイク受けは金属など硬い素材でできています。
そのため、そこで反射が起こったり、スパイクの先端がビビったりして、腰高で細身の音になることがあります。そのような音になったらスパイクとスパイク受けの間にフェルトなどの柔らかな素材のものを挟んで振動をロスらせると腰高が改善できます。
また思い切ってスパイク受けを使用せず、その代わりに床が傷付かない十分な厚さのカーペットを、スパイクの下、もしくはスタンドの下全体に敷くのも一手です。
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 スパイク受けを使用する際の対策 |
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・絨毯などが敷かれた床の場合
絨毯やカーペットでスピーカースタンドが浮き上がらないように、絨毯の下の硬い床でしっかり支えられるようにすることがポイントです。
スパイク等が付いていないスピーカースタンドは、四隅に硬い材質のインシュレーターを入れて、インシュレーターが絨毯等の毛足を押しつぶすようにします。
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 絨毯等の対策 |
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特に毛足の長い絨毯の場合、多少質量の大きいスピーカーやスタンドであってもどうしてもスタンドが浮き上がり勝ちになります。そんなときは絨毯と接触する側がなるべく尖ったインシュレーターを使用するなど、スタンドを床でしっかり支えるように工夫をしてください。
毛足の長さによっては袋ナットも効果があります。
スパイク付きスタンドの場合は、なるべくスパイク受けを使用しない方が音質的に有利ですが、スパイク受けを使用するときは、スパイクとの間に柔らかい素材を挟んで、緩衝材の有り無しによる音の違いを確認をしてください。
・畳の部屋やあまり頑丈でない床の場合
スピーカースタンドが安定しにくいので反応の鈍い、情報量の少ない音になり勝ちです。そういったときは質量のある丈夫なオーディオベースでしっかり脚固めをすると、重心の下がった力強い音になり、情報量も増えてきます。オーディオベースの代わりに大理石やコンクリートの板でも代用できます。
なお、スピーカースタンドとベースの間で反射が起こらないよう緩衝材を入れて音の確認をしてください。
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Cの箇所
この箇所の対策はABに準じます。ここでの対策による音の変化は、一般的にはスタンドよりも小さ目ですが、ときには驚くほど変わることがあるので忘れずチェックしてください。。
Dの箇所
棚受けは金属やプラスチック、木材などが一般に使用されるため、接触面が狭いとはいっても振動が伝わりやすい傾向にあります。フェルトのような少し厚手の布を挟んだ方がいいか確認してください。
Eの箇所
まず棚板を調べてください。棚板が薄かったり、中が空洞の張り子の板であったりする場合はこの板自体が音圧を受けて振動しやすい傾向にあるので音質的には良くありません。そのようなときはオーディオボードを使用してください。
オーディオボードを使用するかしないかで音は大きく変わりますから、このチェックは振動対策の早目のうちにやってください。それ以外の細かなチューニングは振動対策の後半で行ないます。
ここで言う細かなチューニングとは、オーディオボードを使用したときに、ボードの下に柔らかい材質の緩衝材が必要か否か、必要ならどれくらいの厚さが最適かといった検討を指します。
また高音域が汚いときはアンプ類の脚の下に柔らかい緩衝材が必要かどうかもチェックされることをお勧めします。この作業も音の仕上げの最終段階でするのがいいでしょう。
最後に、振動対策はセッティングの初期や中期からできるものと、音がある程度煮詰まってきた最終段階でしかできないものなどさまざまです。大まかな振動対策は初期や中期の間に行ない、微調整は最終段階に入ってから行なうようにしてください。
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