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 セッティング  -予備知識-                予備知識|スピーカーの位置決め
ケーブルの接続方法部屋のチューニング振動のコントロールホームシアターの特例事項まとめ

予備知識
目指す音
楽器の成分
ステレオ立体音響再生の原理
スピーカーと試聴位置の関係
スピーカーの設置場所
アンプ類の設置
周波数と波長の関係
エージングについて
 
 
「同じ機器とケーブルを使えば、同じ音が出てくる」と思っている人は、世の中にはたくさんいらっしゃいます。
ところがどっこい、出てくる音は千差万別。、時には同じ装置とは思えないほど、大きく異なることがあります。

機器をポンと置いて接続して、それだけで音楽を聴いていらっしゃる方が大半で、中には、音の良いケーブルに交換したり、スピーカーの下に10円硬貨を敷いたり、と多少の工夫をされている人も散見されます。
しかし、この程度のことをして「満足のいく良い音」が得られるのはラッキーな方で、多くの人は機器の能力を発揮させないまま聴いていらっしゃいます。

その原因はオーディオ装置が置かれる環境にあります。その環境には多くの「音を悪くする要因」が潜んでいます。同じ機器、同じケーブルを使用しても同じ音が得られないのは、この「音を悪くする要因」が環境によって異なるからです。
これまで45年以上、いろいろな場所で試聴会を行なってきましたが、機器を接続するだけで満足のいく音が得られたことは一度たりともありません。
もちろん、同じ機器とケーブルを使用しても、場所が変わると同じ音は出ません。

そこで、まともな音(私にとって良い音)になるように、「音を悪くする要因」を取り除いていきます。
この「音を悪くしている要因を取り除くこと」をセッティング、あるいはチューニングと呼びます。
そして、「音を悪くする要因」をどれだけ取り除けたかで、出てくる音のグレードが決まってきます。

本章ではセッティングの方法について、専門的知識がない方でも理解できるように、なるべく平易な言葉で紹介していますので、「むずかしそうだな」 「自分にできるかな?」などと躊躇せず、ぜひ一読してトライしてください。

なお、このページは、「音について」 「ステレオ立体音響再生」 「スピーカーを設置する壁面の選び方」など、セッティングを始めるに当たって知っておいていただきたい事柄をまとめてみました。
 
■目指す音
それではセッティングによって、音をどのようなに仕上げていくかを考えてみたいと思います。

ここでひとつの事例をご紹介しましょう。
それは平成19年、大阪のY店で試聴会をしていた時のことです。試聴会の途中、ある紳士がフラッと入ってきて「音が硬い」と言われました。
その時出ていた音は決して硬い音ではなく、欧米でも高い評価を得ている方向の音、まるでそこで演奏しているような、目の前の空間から音が飛び出してくるような、活き活きとした生っぽい音だったのです。
もちろん、大多数の人はその音に惜しみない拍手を送ってくれていました。

試聴会終了後、その紳士に、「あなたのお好みの音になるように少し音を変えてみましょう」と言って、CDプレーヤーとアンプの電源の接続を、最も情報量が減る方法に変更し、先ほどと同じディスクを同じ音量で試聴していただいたあと、
「あなたのお好み方向に来ましたか」と尋ねると、「そうだ」という答えが返ってきました。

オーディオ界では、「自分の好みの音が出ればいい」と、よく言われます。確かにそういった一面もあるかもしれませんが、私は「好みの音」を云々する前に、オーディオ再生にとって「大事なこと」があると考えています。
それを「音が硬い」紳士の例で説明しましょう。
情報量を減らすと、耳当たりのいい音になります。しかし、情報量が減れば減るほどば、楽器本来の音色が希薄になっしまい、演奏家やレコーディングエンジニアが意図した音が伝わって来なくなります。

私はオーディオ再生で大事なこととは、楽器本来の音色感が再現できているか、曲に込められた演奏家やレコーディングエンジニアの気持ちが伝わってくるか、といった「音楽が本来あるべき姿」が、まず再現されるべきだと思っています。
そんな音がきちんと出るようになれば、音楽に心がときめき、個人の好みを云々する必要もなくなってしまうと考えています。

私が普段セッティングに際して重視しているのは、
・楽器の音は、その楽器らしい音色、その発音構造からくる音色をなるべく忠実に再現する
・奏法の特徴をなるべく忠実に再現する
・楽器やボーカルの口の大きさなど、音像の大きさをなるべく忠実に再現する
・音場空間の拡がりや音像定位をなるべく忠実に再現する
の4点です。

これから7ページにわたってセッティングの手法をご紹介しますが、目標とするところは、上記の4点を高い次元で実現して、楽器本来の音色を再現し、曲に込められた制作者の意図が感じ取れるようにすることです。
 
■楽器の成分
セッティングの目的のひとつが、楽器の音色の違いを忠実に再現することですが、それにはどのようなことに注意しなければならないかを調べることにしましょう。
右の図はピアノとオーボエの波形です。山と谷が同じ周期で繰り返していますが、波の形はずいぶん違います。
同じ周期で山と谷が繰り返し現れるということは、この2つの楽器は同じ音程で演奏されたことを物語っています。
そして、この2つの楽器を同じ音程で演奏しても音色が異なることを、この波形の違いが示しています。

それでは楽器の音に含まれている成分を、ピアノやオーボエよりも、もっと複雑な波形を示すヴァイオリンで調べることにしましょう。

ピアノの波形

オーボエの波形
右がヴァイオリンの波形で、この波形に含まれる成分を示したのが、右下のスペクトル分布です。
横軸が周波数で、縦軸が音圧レベルを示していて、どの周波数にどれくらいの成分が含まれているかを表しています。

ヴァイオリンの波形
なお、縦軸は1目盛が20dBなので、1目盛り小さい成分の音圧は1/10、2目盛り小さいのは1/100と、1目盛りごとに1/10ずつ小さくなります。

最初に注目してほしいのが、500Hzよりも少し低い周波数にある大きなピーク(成分)です。これよりも低い周波数には成分がなく、数多くある成分の中で最も低い周波数です。
この成分が基音(基本波)と呼ばれるもので、楽譜のオタマジャクシの位置=演奏された音程ということになります。

 ヴァイオリンのスペクトル分布

そして、基音の周波数の2倍、3倍、4倍、5倍・・・という整数倍の周波数に成分のあることが認められます。これらは倍音(高調波)と呼ばれるものです。
倍音は、どんな楽器でも、同じ音程で演奏すれば、同じ周波数に現れます。ところが、個々の倍音のレベルは楽器によって異なります。つまり、楽器が同じ種類であれば、倍音の出方はよく似たパターンを示しますが、楽器が異なると、まったく違ったパターンを示します。
そして、あるパターンが脳に伝えられると、私たちはそれを過去の経験と照らし合わせ、それが何の楽器であるかを判断しています。

オーディオ再生では、そのパターンがそこそこ正確に再現できれば、それがどんな楽器なのかを判断できます。しかし、個々の楽器本来の音色を再現しようとすると、余程正確にそのパターンを再現しなければなりません。
とりわけ、高次(高い倍数)の倍音は、基音に比べて1/100以下、あるいは、1/1000以下という小ささです。
同じ種類の楽器でも、楽器によって音色は違いますが、同種の楽器の微妙な音色の違いは、このとても小さな高次の倍音の出方に違いがあるのです。

そのため、楽器本来の音色をより忠実に再現しようとするならば、この小さな小さな倍音を可能な限り正確に再生し、耳に届くようにしなければなりません。実は、セッティングという作業はこの微小な倍音を聴こえなくしている要因を取り除くことにあるのです。
 
■ステレオ立体音響再生の原理
きちっとセッティングされたステレオ再生装置では、2つのスピーカーの間にステージが現れ、そのステージ上にたくさんんの楽器が等身大のサイズで定位します。もちろん、スピーカーから音が出ていることなどまったく意識させません。
これがステレオ立体音響再生ですが、それでは、なぜ立体的に音像が定位するのかを説明しましょう。
私たちの耳は顔の両側についています。そのため、右の図のように、目覚まし時計が右手で鳴った場合、右の耳に入ってくる音の方が左の耳に入ってくる音よりも早く、かつ大きいです。そして、時計が右に寄れば寄るほど、右の耳に入ってくる音はより早く、かつ、音量差も大きくなります。
逆に、時計が真正面にあるときは、左右の耳に同じ音量の音が同時に飛び込んできます。
このように、左右の耳に入ってくる音の時間差や音量差によって、私たちは音源がどの方向にあるかを認識しています。
これを両耳効果と呼びます。

ステレオ録音はこの両耳効果を利用したものです。
右の図のように、右から左に向かって走っている汽車の音を、2本のマイクロフォンを立てて録音したとしましょう。最初は右のマイクロフォンに入ってくるのは、左のマイクロフォンよりも早く、かつ大きな音です。
それが次第に時間差と音量差が少なくなり、正面に来たとき、左右のマイクロフォンが拾う音は時間差も音量差もなくなります。
さらに、左に走っていくにつれて、左のマイクロフォンが拾う音の方がより早くなり、音量差も大きくなっていきます。

こうして収録された時間差と音量差を含んだ音を2台のスピーカーで再生すると、それに両耳効果が加わって、汽車があたかも右から左に向かって走っているように聴こえるのです。

演奏を録音するのもこれと同じです。それを下図を例に説明しましょう。
中央の歌手の声は、時間差のない同じ音量が2本のマイクロフォンに入ってきます。
しかし、左のヴァイオリンの音は、左のマイクロフォンの方には、右のマイクロフォンよりも若干早く届き、かつ音量も大きくなります。
一方、右後方のサクスフォンは、左のマイクロフォンに届く音の方が右のマイクロフォンに届く音よりも若干遅く、音量も若干小さ目です。

各楽器から放射された直接音は、このような時間差や音量差をもって記録されますが、実際に記録される音はこのような直接音だけではありません。
演奏会場では直接音以外に、壁や床、天井で反射された間接音が加わります。この間接音は、楽器の位置関係をさらに明瞭にする上で重要な要素となります。
例えば、歌手の声が後方の壁で反射されるのと、サクスフォンの音が反射されるのとを比べると、直接音と間接音の間に生じる時間差は、サクスフォンの方が短くなります。

こういった諸々の直接音と間接音の情報がマイクロフォンで拾われ、ディスクに記録されています。この情報をどれだけ正確に再現し、脳まで届けられるかが、リアルなステージを作り出す上での鍵となるのです。
 

演奏会場での聴こえ方

マイクロフォンでの収録

ステレオ再生の音場

※ この項ではステレオ再生の原理を理解しやすくするため、2本のマイクロフォンで収録するワンポイントマイク録音方式の仕組みで説明しました。
しかし近年は、ワンポイントマイク録音方式は少数派となり、個々の楽器の音を複数のマイクリフォンで収録し、それらをあとから人工的に音量差などをつけて楽器を定位させるマルチマイク録音方式が主流となっています。
 
■スピーカーと試聴位置の関係
セッティングは機器類をどこに置くかを決めることから始まります。そんなのどこでもいいじゃないか、空いているスペースに置けばいいじゃないか、と思っている人が多いですが、実は、設置場所の違いで、出てくる音に大きく差がつくことが往々にしてあります。
もしも、音の悪い場所に置いたが最後、どんなに音の良い機器であっても、また、どんなにセッティング技術を駆使しても、決して満足のいく音には仕上がりません。つまり、いい音を出したいなら、まず音のいい場所を選ぶことが重要になってくるのです。
そこで、この項と次の項で、セッティングの中で最も重要なスピーカーの設置の基本的な注意事項についてについて触れてみたいと思います。
店頭のほとんどのミニコンポは、右の図のように、アンプとCDプレーヤーを挟むようにスピーカーが設置されていて、これが正しい設置方法だと思って、多くの家庭でも同じような設置をしているのをよく見かけます。
しかし、こういう設置方法だとリアルなステージを作るどころか、音質さえ悪くしてしまいます。

というのは、
@機器から2〜3mも離れて聴くとすれば、スピーカーの間隔が狭過ぎてモノーラルに近い音場になってしまいます。これではステレオの音源を2台のスピーカーで再生する価値は激減してしまい、そこにリアルなステージを作れません。

Aまた「振動のコントロール」のページで紹介しているように、スピーカーとアンプ、CDプレーヤーが接近し過ぎていて、アンプやCDプレーヤーがスピーカーの振動の影響をモロに受けてしまいます。

そこで、まずアンプとCDプレーヤー、スピーカーを店頭のように行儀よく固めて並べるのではなく、アンプとCDプレーヤーはスピーカーから離して設置することを念頭に入れて設置場所を選ぶようにしましょう。

録音現場では、レコーディングエンジニアと2台のモニタースピーカーの位置関係は、おおよそ正三角形です。レコーディングエンジニアは、スピーカーをこのように配置して、音場の拡がりや各楽器の音像の定位をモニターし、目に見えないキャンバスに音楽という絵を描いています。
そのため、録音に携わった人たちの意図を感じ取るには、それに近い位置関係を保つことが必要なのです。そうすることで、2台のスピーカーから放射された音は、空間でうまく合成され、そこにステージをつくり、リアルな音像を結ぶことができるのです。

店頭でよく見かける設置例

上のように設置した場合の音場

スピーカーと試聴位置の関係
 
■スピーカーの設置場所
オーディオ機器の設置は、まずスピーカーの設置場所を決めることから始めます。それには前項で説明したスピーカーと試聴位置が正三角形の関係を確保できる場所を見つけてください。選択肢が複数ある場合は、その中で一番音の良い場所を探しましょう。

それでは音の良い場所とはどんなところでしょうか。
私たちが音楽を鑑賞するとき、スピーカーからの直接音だけでなく、壁で反射された音も一緒に聴いています。
ところが、スピーカー周辺の壁の材質や厚さなどに違いがあると、そこで反射される音の質が異なるために、違った音に聴こえるのです。
とりわけ、スピーカーに近い壁ほど反射音も強くなり、その影響が大きく出るので、なるべく反射音の質が良い壁面を選ぶようにしなければなりません。そのポイントは次の3点です。

・きれいな反射音が得られる壁面を選ぶ
きれいな反射音が得られる壁というとむずかしく聞こえますが、壁を軽く叩いてその響きを調べます。そのとき、中指か人指し指を丸め、その第二関節(正式名称:近位指節間関節)の背で、また、強く叩くときは、握り拳をつくって壁を軽く叩いてみてください。
壁によっていろんな音がします、材質固有の強い響きがあったり、ビビリ音がしたり、余韻が長く尾を引くといった壁の前にスピーカーを置くと、そういった壁の響きが再生音にまとわりついて、明瞭度を悪くしたり、音数が少なくなったりします。
コツコツという音のする、固有の響の少ない、余韻が早く消える壁が、きれいな反射音の得られる壁で、この前にスピーカーを置くと、セッティングの苦労も少なく、かつ、レベルの高い仕上がりになります。

・低音をしっかり反射してくれる壁を選ぶ
豊かな低音は音楽に安定感を与え、音場空間の拡がりを正しく再現する上でも不可欠です。
ところが、音は壁などにぶつかった場合、低音と高音とでは、反射される割合が違ってきます。一般的に、波長が長くなるほど、壁を透過する割合が増えて、反射される割合が低下します。
一方、スピーカーの指向性を見れば分かるように、スピーカーから放射された音は低音ほど、横や後ろに拡がりやすい性質があって、壁に当たるエネルギーは低音ほど大きいという傾向があります。

そのため、周波数別の反射音の比率は、壁の材質や厚さで決まってきますが、日本の家屋(マンションを除く)は、比較的軽い壁材が使用されることが多く、かつ薄いので、低音不足になりやすい傾向にあります。
そういった部屋でなるべく量感のある低音を再生しようとするなら、スピーカーを部屋の中で一番がっしりした壁の前に置いて、壁が反射する低音をうまく利用する必要があります。

・共鳴のしやすい壁面は避ける
下の図のような凹んだ場所は、その空間の中で固有の共鳴が発生するため、その凹みの中にスピーカーを設置すると、こもって明瞭度の悪い音になりますから、こういった場所に設置するのは避けましょう。
しかし、こういった場所しかスピーカーを設置できない場合は、なるべくスピーカーを赤い点線よりも手前に出せば出すほど明瞭度は改善されます、と同時に、「部屋のチューニング」の項で紹介する、空間内の共鳴対策をすれば、凹みの悪影響をある程度緩和することができます。
しかし、音質の改善がある程度図れるとしても、それには限度があります。そのため、なるべくこういった凹みのある壁面を避けることが賢明です。

はなはだしく音を悪くする空間

側方の壁面が凹んでいる空間

棚のしたなどの空間

ハリと壁に囲まれた空間

前方が急激に拡がる空間

できれば避けたい壁面
スピーカー周辺に図のように、前項ほどではなくても、多少の窪んだ空間があると、この空間の共鳴や反射音の乱れによって音の明瞭度やエネルギー感が損なわれやすいので、できればこういった凹みがある壁面の前に置くことも避けるようにしましょう。




・スピーカーは左右の壁面から等距離に
右図のようにスピーカーを右の壁に寄せて設置した場合、たとえ左右のスピーカーと試聴位置を結んだ線が正三角形になる頂点で聴いたとしても、音像は全体的に右に引っ張られるだけでなく、再生音の音域(例えば、歌手の声の音程)が変わるごとにフラフラ動くことがあります。

その理由は左右の壁で反射されて耳に届く音に、音量と時間(位相)に差が出るからです。
このような場所にしか置けないときは、右側の壁の1次反射(1回目の反射のこと)のポイントに吸音材を貼って反射を抑えると、音像の不自然さは幾分か改善できます。しかし、それは根本的な解決にはならないので、なるべく左右の壁面から等しい距離にスピーカーが設置できる場所を選んでください。

 
■アンプ類の設置
アンプ類の設置は、スピーカーの設置ほど音が大きく変わるということはありませんが、この設置をしっかりしておかないと、それがネックとなってレベルの高い音に仕上がりません。

音が悪くなる一番の原因は振動です。CDプレーヤーやアンプに使用されているトランジスターなどの電気部品はマイクロフォンと同じで、振動を与えると電気=ノイズを発生させます。このノイズはそれ自体、ノイズとして耳で検知できるほど大きなレベルではないのですが、楽器の音色を決める微小な倍音を聴こえなくし、楽器本来の音色を変えてしまう悪戯ものなのです。

特に、スピーカー振動板の振動は音楽信号そのもので、この振動によって引き起こされるノイズは音楽信号に類似しているため、音楽信号とは無関係の振動によって引き起こされるノイズよりも、倍音を聴こえなくする作用がはるかに大きいです。
そのため、アンプ類はスピーカーの振動がなるべく伝わりにくい場所に設置することが大切です。

この振動が音質に及ぼす影響の重大性を真剣に考えている人は、オーディオ界広しと言えどもきわめて少数派です。
だからこそ、この振動の影響を徹底して除去していくと、そこには多くの人が到達し得ない活き活きとした表情の世界に踏み入ることができるようになります。

この観点から見ると、「スピーカーと試聴位置の関係」で紹介した、アンプ類の両脇にスピーカーを設置するのは、ステレオ効果が激減するだけでなく、スピーカーの振動が台や空気を介してモロに伝わるため、音質的にも非常に不利であることが一目瞭然にお判りになると思います。
このような設置をしている人は、一度低音が出ているときにアンプの天板を触ってみてください。天板が大きく振動しているのに驚かれると思います。

スピーカーからの振動の影響をなるべく受けにくくするには、アンプ類をスピーカーからなるべく遠ざけたり、スピーカーとは別の台に乗せたりするのが効果的ですが、それに加えて、ビビリがなく、がっしりして、固有の響きが少ない台に乗せることも重要です。
また、アンプとCDプレーヤーを積み重ねるのではなく、右の図のように、それぞれを台でしかり支えるようにしましょう。

アンプとCDプレーヤーの設置例
一般家庭では、どうしてもベストな設置ができないことが多いと思いますが、許される範囲でできるだけスピーカーの振動が伝わりにくい場所と設置方法を選んでください。
その上で、別項の「振動のコントロール」で紹介する振動を減衰させる方法を採用すれば、かなりのレベルまで音質を向上させることができます。
 
■周波数と波長の関係
セッティングを行なう上で覚えておいて欲しいのが周波数と波長の関係です。
音は空気の粗密波、つまり、気圧の高低の変化が空中を伝搬していく波です。言い換えれば、気圧の高い箇所と低い箇所が空中を移動しているわけです。仮に気圧の高い箇所と低い箇所が混ざり合えば、気圧の変化は減少しますが、逆に、高い箇所同士が混ざると強調されます。

周波数と波長の関係が分かると、2つの音波が合成されたとき、どれだけの時間差(=距離の差)があると、どの周波数で音圧が弱められるか、あるいは逆に、どの周波数の音圧が強調されるか、あるいは、部屋の中で定在波が発生している場合、定在波の周波数は何Hzか、また、それによってどの場所で音圧が著しく低下するか、といったことが判るようになります。
周波数とは1秒間に起こる気圧の高低の変化の回数で、100回であれば100Hz(ヘルツ)、1,000回は1,000Hz(=1kHz)です。一方、音は1秒間に約340m進みます。従って波長は

波長(m)=340(m)÷周波数(Hz)

で求めることができます。
この計算式から、100Hzの音の波長は3.4m、1,000Hzは34cmであることが分かります。

波長
また、オーディオでは「逆相」「同相」という言葉をよく使います。
これらは、2つの音波の位相の関係を表わすもので、左側のAとBの音波は半周期(180度=1/2波長)ズレています。このような関係を逆相と言います。このような逆相の関係にある2つの音波が合成されると、気圧の変化は相殺され、音圧は下がります。
100Hzの音波の場合、Aの音に対してBが約1.7m(時間にして0.005秒)遅れると逆相になります。


逆に、右側のようにズレがない、あるいは1波長ズレている場合は気圧の高低は同じタイミングで起こりますから強調されます。この関係を「同相」と呼び、音圧は上がります。
 
■エージングについて
スピーカーやアンプの設置場所が決まって、結線を終えたらいよいよセッティングの開始、といきたいところですが、ちょっと待ってください。
電源を入れたすぐあとの音は決して良い状態ではありません。音の悪い状態でセッティングをすると誤った判断をする可能性があるので、音が安定するまではセッティングをせずに普段の音量で鳴らしておいてください。

音がほぼ安定するまでの時間は新品の場合は少なくとも20分から30分、数ヶ月以上使用した機器では5分〜10分くらいが目安ですが、実際には、機器により、また使用頻度によりその時間は異なりますから、音が安定するのを確かめてからセッティングを開始するようにしてください。

エージングとは本来、「老化」とか「年をとる」という意味です。オーディオ機器は新品のときは音がスムースに出ず、硬い音をしています。そして、使い込んでいくにつれて音の出はスムースになり、機器本来の音に変わっていきます。
その状態になるまでの日数は、機器によって、あるいは日頃演奏する時間によって異なりますが、おおよそ数ヶ月かかります。このように月日を重ねて機器本来の音が出るようになるまで鳴らし込むことをエージングと言いますが、狭義では、電源を入れてから音が安定するまで鳴らし込むこともエージングと呼んでいます。

セッティングをする場合のエージングとは後者を指します。音が安定するまでの数ヶ月間待つ必要はありません。
特に、スピーカーの位置決めはエージングが完全に終わらなくても(数ヶ月待たなくても)できますので、電源を入れて音が安定し始めたら行なってください。
それ以外のセッティングの項目は、それ以後、ボチボチ焦らずにしてください。

ところで、音がほぼ安定するまでの時間にはある傾向があります。新品のときは安定するまでに時間がかかるだけでなく、しばらく鳴らさないと、すぐに大きく元の状態に戻ってしまいます。
しかし、使い込んでいくと、安定するまでの時間は短くなり、しばらく電源を入れなくても、大きく昔の音に戻ることはありません。

セッティングは1日では終わりません。日数をかけて徐々に望む音に仕上げてください。その際、音が安定するまで、慌てずに、音が前日まで鳴っていた一番良い状態に戻るまで待ってから始めてください。

ところで、エージングのためにホワイトノイズのような特殊な信号を使用する人もいますが、そんなことをする必要はありません
普段聴く音楽を、普段の音量で鳴らし込むことをお勧めしています。
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